有機農業が目指すもの①

近年、自然農・有機農業が注目されており、農水省が策定した「みどりの食料システム戦略」では2050年までに有機農業面積を100万haへ拡大するとしています。(現在2.3万ha)

 

さて、毎年12月8日は「有機農業の日」です。

 

2005年8月

日本有機農業学会が「有機農業推進法試案」を作成

 

2006年12月

試案をもとに、議員立法により国会審議されていた「有機農業推進法」が可決されます。

 

それまで「有機農業」を推進する法律がないなか

有機に取り組む生産者

有機を求める消費者

 

双方の努力が実を結んだ賜物で、大きな出来事でした。

 

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有機農業には現在2つの法律が関わっています。

(1)日本農林規格化等に関する法律(JAS法)

有機JASは1999年に改正されたJAS法に基づく「有機農産物に係る検査認証制度)2001年4月1日施行」による表示規制として機能しており

①有機農産物の日本農林規格(有機JAS規格)のルールに従って栽培し

②登録認定機関の認証を受けたもの

のみが「有機」・「オーガニック」と表示できます。

 

(2)有機農業の推進に関する法律(有機農業推進法、2006年)

有機農業の推進に係る

・基本理念

・国、地方公共団体の責務

を定めるとともに

・有機農業者への支援

・普及、技術開発

・消費者との相互理解

に係る財政支出の根拠法になっています。

 

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1960年代以降、日本が工業国として発展するなか、農業基本法下において構造改善、大規模化、選択的拡大を迫られます。

しかし、食の安全、環境問題に対する意識が高まるなか、各地で工業化した農産物に異を唱え、有機・無農薬・無化学肥料など保全型農業に取り組む農家が現れます。

 

当初は生産者と消費者が個々に取り引きしていた有機農産物。

やがて、量販店が参入するようになりますが、この頃は生産者や流通業者の独自基準による表示で、誇大表示や不当表示が問題になりました。

 

そのため国は

 

92年の「有機農産物等に関わる青果物等表示ガイドライン」で行政指導による規制を行い

その後99年にコーデックス委員会が「有機食品の国際基準」を設定したのに合わせ

「JAS法」を改正、有機JAS制度を導入します。(有機が独立したため、このときガイドラインから有機が外れます)

 

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ただ、JAS法は有機農産物に対する単なる”表示規制”の法律であり、この時 有機推進の根拠となっていたのは

99年「持続性の高い農業生産方式の導入に係る法律(持続農業法)」です。

 

しかし、持続農業法は有機だけでなく減農薬など環境保全型農業の全てを含むものであり、関係者からは有機農業に特化した法整備を求める声があがっていました。

ちなみに、持続農業法のもと始まったのでがエコファーマー制度です。

 

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一方

・農薬、肥料による環境汚染

・BSE

・ポストハーベスト

・食品の産地偽装

食の安全・安心や気候変動、環境問題の関心が高まります。

 

こうした産消それぞれの機運の高まりを受け

2006年12月8日に「有機農業推進法」が制定されます。

 

これまで環境保全型農業に一まとめにされていた有機農業を独立させ

国を挙げて推進することを定めた画期的な出来事でした。

 

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分かりにくいので、以下、簡単に当時の年表を書いておきましょう。

<有機JAS と ガイドライン>

 

1992 有機農産物等に係る青果物等表示ガイドライン(この時は無農薬表示「可」)

97 ガイドラインに米麦追加

名称を有機農産物及び特別栽培農産物に係る表示ガイドラインへ

99 コーデックス委員会の有機食品国際基準

01 有機農産物JAS規格はじまる

(ガイドラインから有機を削除)

03 特別栽培農産物に係る表示ガイドライン改正(無農薬、減農薬などの表示を「特別栽培農産物」に統一)

 

<環境保全型農業 と 農政>

1992 「新しい食料・農業・農村政策の方向」策定(環境保全型農業を位置づけ)

99 「食料・農業・農村基本法」制定

99 「持続農業法」制定

06 「有機農業推進法」制定