大豆(枝豆)の莢と子実

昨年の暮れに、農学校の交流会をしたら、「今年はみんなで味噌を作りたいね」なんて話しになりました。

今回は「大豆(ダイズ)」の話しをどうぞ。

 

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味噌の原料になる大豆は枝豆がさらに熟したものです。

さて、大豆(枝豆)は旭川では5月下旬に種を播くのが一般的です。その後、7月末~8月上旬に花が咲いて、花が枯れると莢がつきます。

 

莢の色は緑ですから「葉緑体」があり、葉ほどではありませんが光合成を行い、葉と莢の両方から光合成産物がおくられ豆が膨らみます。

 

豆の外側は「種皮」に包まれ、その中に子葉と胚軸と幼根があり『子実』と言います。

莢と種皮は『ヘソ』でつながっており、ここには維管束が通っていますから、水や水分は莢→ヘソ→種皮の順に伝わります。

しかし、種皮と子実の間に維管束はなく、子実は種皮の内部に到達した養分を吸収して成長します。

 

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大豆は(枝豆も)水分のほかにタンパク質、脂質、炭水化物を含みますが、これらは子葉に蓄えられています。

タンパク質と脂質は細胞のなかで均一に分布するのではなく、プロテインボディ・オイルボディと言う特別な場所に隔離して保存されています。

 

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大豆は脂質を多く含みます。

脂質は炭水化物に比べると同じ重さでも得られるエネルギー量が多いので、種の大きさを小さく出来る利点があります。

ヒマワリやゴマなども、これにあたります。

 

反面、発芽の時に脂質を炭水化物に変換する必要があるので特別な代謝経路を持っています。

 

大豆はタンパク質も多く含み、タンパク質はチッ素を含む化合物ですから、芽生えの時に根から吸収するより前にチッ素を使えて初期の成長に有利です。根粒菌が共生し始めるとチッ素の吸収は根粒由来のものが多くなります)

 

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大豆が熟してカラカラに乾いてくると莢が割れやすくなりますが、これは大豆が莢を割って種子を辺りに散布しようとするためです。

大豆に限らず、スナップエンドウやインゲン豆などマメ科の植物の莢を割ると、どちらか一方に豆が片寄り、莢とつながっています。莢は背中側と腹側に分かれていますが、背中側を『縫合線』と言い、豆の「スジ」にあたり、種子(豆粒)はこちら側に並んでいます。

腹側は背縫線と言い、莢は何層かの層状になっています。

 

枝豆の時期を過ぎて大豆へと成熟し始めると、莢も豆粒も乾燥してカラカラになっていきますが、莢の層状になっている部分は層ごとに違う成分が蓄積されていきます。

ある層は親水性のセルロース

ある層は疎水性のリグニン

を主体にするため乾燥の過程で縮み具合が変わり、やがて捻れたり反り返ったりして莢が割れることになります。

 

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マメ科の果実は一枚の心皮からなり、果皮が縫合線と背縫線で2つに分かれるのが特徴で『豆果』と呼ばれます。心皮は成熟すると果皮になり種を守っていますが、成熟すると何らかの方法で種子を散布しなければならず、マメ科の植物が選んだ戦略が莢を割る。ということになります。

 

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さて、大豆にビタミンCは含まれませんが枝豆には含まれます。枝豆の時期は莢も光合成をしていますから活性酸素である過酸化水素を生じることがあり、これを無害な水にするためビタミンC(アスコルビン酸)が使われます。莢が乾燥しカラカラになると光合成も終わりますので、ビタミンCも必要なくなります。

 

ビタミンCはいま書いたように強い光エネルギーから生じる活性酸素を消去するために存在しますから、太陽をいっぱい浴びた野菜の方がビタミンCが豊富に含まれるのでしょう。