栽培管理と考え方

はじめに

ここからは、当農場の栽培管理を何項目かに分けてご紹介します。多少農業の専門用語が出てくるので、難しく感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、農場の栽培に対する考え方も詳しく述べておりますので、しばらくお付き合い下さい。

旭川市の気候について旭川市の気候について

みなみなふぁーむのある旭川市は、北海道のほぼ中央部に位置し、夏は30度を超える事もある反面、冬にはマイナス20度を下回るほど冷え込むこともあります。雪は11月上旬には降り始め、3月末までは積雪があります。

また、5月中旬頃までは遅霜の危険性もあり、10月中旬には初霜が降ります。そのため露地作物のみでは、収穫期間が7~8月に集中しすぎてしまいます。お客様に農場の自然農法野菜をなるべく長く楽しんで頂きたいとの思いから、ビニールハウスを9棟導入し、収穫期間を5~10月まで確保しています。

使用している農業資材使用している農業資材

無肥料栽培では、根をどれだけ地中に張らせるかが重要です。そのためには、地中の温度(地温)が重要です。地温を保つことを目的として、マルチを使用しています。マルチには、雑草を抑える役割もあるので除草作業の軽減にもつながっています。(雑草については、後ほど詳しく記載しています。)

雪の残る3月から育苗をしているため、育苗ハウスでは地熱確保のため電熱線を使用し、必要に応じて、暖房機も使用しています。

セルトレイで育苗をしている作物は、培土に有機JAS・自然農法でも使用が認められている「有機園芸培土」を使用する場合があります。ポット育苗では、農場の畑の土をそのままポットに詰めています(もちろん何も添加していません。)

耕耘耕耘

自然農法には不耕起栽培の方が良い、という意見も聞きますが当農場では作付前1回トラクターによるロータリー耕起を行っています。

当農場の耕起目的は、
①植付け時の土中酸素供給(作物の初期生育向上)
②雑草を土中に埋める(作物の初期生育向上)
③植えやすさ(作業性向上)
などです。ただし、浅起こしに(10~15cm程度)に努めています。

デメリットとして感じているのは、
①ロータリー耕によって硬盤層が形成されないか
②ミミズなど有益な小動物の減少
③前作の残渣物や雑草などの有機物が、大量に一気に土中に埋まるので養分供給過多にならないか
などの心配があります。

  • 作物栽培
  • 収穫終了
  • 残渣物は
    そのまま雪の下
  • 春の植付け前に
    残渣物をすき込み

というようなローテーションになっています。

4.趣旨について種子について

極力自然農法種子を使用するように努めており、自然農法国際研究センターやたねの森、野口種苗など自然農法種子の取り扱いに定評のある種苗店から購入することが多いです。3年前からは一部品目では自家採種に取り組んでいます。

しかし、お客様の嗜好も多様化(人によっての美味しいが違う)、高度化(より美味しく、見た目が良く、栄養価が高く、日持ちがするもの)しており、自然農法種子では対応しきれない場合があります。また、栽培する側の都合(収量性、品質、耐病性、耐虫性、栽培のしやすさ)もあるため、F1種子を使用する場合があります。他に代替えのきかない品種については、やむをえず種子消毒のされた種子を使用している場合もあります。品種名や、その特徴については各品目の詳細情報をご覧下さい。

5.肥料について肥料について

当農場では平成26年より全面積を無肥料栽培にしています。牛糞や鶏糞などの動物性堆肥、油かすや米ぬかなどの植物性堆肥はもちろん、炭カルやもみ殻、稲わらなどの土壌改良資材も使用していません。

我が家の作物に対する栄養分は、前作の残渣物や圃場に生える雑草が枯れて、土に還元されていると思っています。不思議ですが、無肥料で作物は旺盛に生育しています。

6.病害虫との付き合い方病害虫との付き合い方

農薬についても施用しませんので、ある程度の病害虫は発生しますし、作物によっては収穫前に蔓延し収穫皆無となってしまうこともあります。

リスク分散のために様々な種類の作物を栽培しています。当農場で最近多い病害虫は、ハウス内における真夏のハダニ、秋口に発生の多くなる「うどん粉病」です。アザミウマ、ヨトウ虫などの発生も見られます。真夏にアブラナ科の葉物を栽培すると、アオ虫・キスジノミハムシの食害が多発するため、葉物は春先と晩秋の収穫のみとしています。大根もキスジノミハムシのほか、線虫による被害もあるため春のみの栽培としています。

7.雑草との付き合い方雑草との付き合い方

当農場は、野菜作りの前は水田だったためヒエやメヒシバなどのイネ科雑草が多いほか、アカザ、ギシギシ、イヌタデ、クローバー、ハコベなど多種多様の作物が生育しています。

栽培している作物より雑草の方が背が高くなると、生育が悪くなるのでマルチを使用したり草刈り機や手刈り除草で、特に初期生育は順調に育つようにしています。

ただし、作物がある程度の大きさになると雑草処理は几帳面には行いません。作業の邪魔になる位(ひざ丈くらい)になったら、草刈り機で刈り倒す位です。むしろ、畝間に草が生えていることで圃場の過湿・過乾燥を防げますし、露地では大雨のあとでも作業通路がグチャグチャになりません。また、刈り倒した雑草はやがて土に還り土壌の栄養分となります。緑肥作物としての効果もありますので「肥料が生えている。」くらいの気持ちでいた方がいいかもしれませんね。ちなみに、雑草が作物のすぐ側に一杯生えていても、初期の除草さえしっかりしていれば生育が悪くなるということはありません。

8.栽培管理と水管理栽培管理と水管理

肥料、農薬を使用しないため栽培管理は自然農法で極めて重要ですし、ハウス栽培では水やりのタイミング・量・時期の駆け引きが栽培の成否を分けると思っています。樹勢を極端に弱らせてしまうと、なかなか回復できないため、葉色や茎の太さの観察、病害虫の発生状況に合わせて、わき芽取りや摘芯・摘果、潅水量の調節に細心の注意を払っています。

収穫始めなどは、まだまだ株も小さいため通常のサイズよりも小さめで収穫するなど工夫しています。また、樹勢が弱まってきたときは一度摘果して株の負担を軽くしたりもします。小さめのサイズの野菜が出荷された時は、樹勢回復の作業中なんだな。と思って頂けると幸いです。